【第4章 陰陽五行の理 D】応用思想

十干

十干とは「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」のことであり、「甲・乙・丙・丁」の四つは現代の日常生活で使われることもしばしばある。これも本来は五行思想から出てきたもので、木火土金水のそれぞれを「兄弟(えと)」の二つに分類したものなのである。またそれぞれが何か象徴するものを持っている。以下の十干表を参考にしていただきたい。

十干 配当表(表2)

*参考『陰陽五行と日本の民俗』

五行







































海洋
大河
洪水
水滴
雨露

「兄弟(えと)」のうち「兄(え)」は陽の気を持ち「剛強」や「動」をその本質とし、「弟(と)」は陰の気を持ち「柔和」や「静」をその本質としている。つまり五行の中を更に陰陽に分けたのである。また、十干の「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」のそれぞれの文字にも一つ一つ意味があり植物の成長から死滅の過程を通じて万物の栄枯盛衰を表していて、これを「十干象意」という。

「甲」は草木の種子が厚い皮を被っている状態、「乙」は草木の幼芽が伸長しきっていない屈曲の状態、「丙」は草木が伸長して姿形がしっかりしてきた状態、「丁」は草木の形態の充実した状態、「戊」は草木の繁栄して盛大になった状態、「己」は草木が繁栄して盛大となり、かつその条理の整った状態「庚」は草木の成熟して行き詰まった結果、自ら新しいものに改まっていこうとする状態、「辛」は草木が枯死してまた新しくなろうとする状態、「壬」は草木の種子の内部に更に新しいものが妊(はらま)れる状態「癸」は種子の内部に新しい生命が根付く状態であり、ここから更に「甲」の状態へと戻りこの各過程が永遠に繰り返されていく。つまり十干の考え方は「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」のそれぞれの文字に固有の意味を与え、それぞれの働きの循環を考えていく世界観であり「象徴の世界観」であるといえる。

この思想の根底には、万物は必ず滅んでいくものであるが、滅ぶことによって新しいものが生み出されていくという世界観(輪廻)があるように思える。この輪廻の世界観は仏教を理解する際にとても重要になってくるのである。