【第2章 多神教の理 A】神の世界観

様々な世界観の中でも最も特徴的なものに「神」を中心とした世界観がある。「神」を中心とした考え方は二つの形態に分けることができるだろう。それは「一神教形態」と「多神教形態」である。「一神教形態」とはキリスト教やイスラム教に見られるように、この世界の全てのものを包括するただ一人の神を考えるものである。これに対して「多神教形態」とはギリシャ神話や北欧神話や日本の八百万(やおよろづ)の神々のように自然物や自然現象、人間の属性を象徴する神がそれぞれの持っている属性にしたがって世界に働きかけることによってこの世界が成り立っている、と考えるものである。後者の中には実在の人物を神格化した英雄に対する信仰を含めて良いであろう。前者は「抽象の世界観」に該当し、後者が「象徴の世界観」に該当するといえる。

この章では、この神を中心とした世界観のうち、多神教形態のものについて見ていく。神話・宗教といってもその範囲は広く、全部網羅することは無理があるので、「創世記」の部分を中心に見ていこうと思う。創世記とはこの世界がどのようにして生まれたかということを記述したものであり、神話・宗教の世界観が最も如実に現れている部分であると私は考えるからである。

多神教形態は、現在のところ様々な形で普遍宗教に吸収されてしまっているために、現在では「宗教」という形態よりも「神話」という形態で残っているものが多いといえよう。現在においては多神教の神話は宗教というよりもまるで一つの小説のような感覚で読むようになってしまっていて、宗教臭さが消えていることから、知らず知らずのうちに単なる昔話として聞き知っているという場合も出てくるのである。そのような多神教形態の中のものとして、この章ではわりと有名な「ギリシャ神話」「神道の神々」について見ていこう。

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