【第3章 一神教の理 B】キリスト教 天地創造

天地創造の七日間(天地の起源)〜創世紀〜

第一日目

「はじめに神は天と地とを創造された。地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。

神は「光あれ」と言われた。すると光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また、朝となった。第一日である。」

最初に注意するべきは、「形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあった」という言い回しである。これは、いわば世界の未完成の状態であり、ギリシャ神話の世界観のはじまりが混沌であったように、或いは、後述の陰陽五行の世界観でも混沌が始まりであったのと、共通しているとは言えないだろうか。もちろん、それぞれの世界観が生み出された文化が異なっているわけであるから、その「混沌」或いは「闇」の厳密な意味には大きな相違があるのであろうが、少なくともイメージとしては共通しているように思える。

暗闇が果てしなき深みの上にあり、神の霊が水の面を覆っている。ここでいう「神の霊」とは、霊魂のことではなく、「神の霊気(オーラ)」であると捉えるのが妥当であろう。

しかし恐らくこの第一日目の部分で最も注目すべきは、神が光を生み出す手段が「言葉」によっていることである。

暗闇の中で神は「光よ現れよ」と言い、そうすることによって暗闇には光が現れ、神はその光と闇とを分けて光を「昼」と呼び、闇を「夜」と呼んだ----これは、神は言葉によって何かを造り出すことができる、ということを意味する。世界は神の言葉の上に成り立っている、ということもできるであろう。この「言葉による創造」は、以後の天地創造の過程でも一貫して行われている。言葉に関しての詳しい考察は後にゆずるが、これはとても興味深いことであるといわねばならない。

聖書の中では、かなり重要な注意キーワードあろう。

第二日目

神はまた言われた、「水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ」。そのようになった。神はおおぞらを造って、おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた。神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。」

大空の上にある水とは降ってくる雨のことを指すのであろう。

第三日目

「神はまた言われた、「天の下の水は一つ所に集まり、かわいた地が現われよ」。そのようになった。神はそのかわいた地を陸と名づけ、水の集まったところを海と名づけられた。神は見て、良しとされた。神はまた言われた。「地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ果樹とを地の上にはえさせよ」。そのようになった。地は青草と、種類にしたがって種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ木とをはえさせた。神は見て、良しとされた。夕となり、また朝となった。第三日である。」

第四日目

「神はまた言われた、「天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、しるしのため、季節のため、日のため、年のためになり、天のおおぞらにあって地を照らす光となれ」。そのようになった。神は二つの大きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を造られた。神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、昼と夜とをつかさどらせ、光とやみとを分けさせられた。神は見て、良しとされた。夕となり、また朝となった。第四日である。」

ここでは、暦が天体を基準にして作られているということを窺い知ることができる。

第五日目

「神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のおおぞらを飛べ」。神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。神はこれらを祝福して言われた。「生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地にふえよ」。夕となり、また朝となった。第五日である。」

第六日目

「神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。神は地の獣を種類にしたがい、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。

神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女に創造された。神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。神はまた言われた、「私は全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。また地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。」

神は自分の姿に似せて人間を、男と女を作ったのである。

この時点で天と地とその全てのものは出来上がったとされる。

第七日目

全ての創造を第六日目に終えた神は、第七日目には働くことをやめて休息をとった。神はこの第七日目を祝福して聖なる日とした。これが安息日、つまり日曜日の起源である。以上が七日間で神が天地創造をなした経過である。創世記はこの後も続き、人間が神によってどのように作られたかということから有名な「禁断の木の実」のくだりへと入っていく。