【序章 理(ことわり)の探究 D】抽象の世界観

この世界がたった一つの究極的な存在に統括されていると考える世界観を「抽象の世界観」と呼びたいと思う。全ての存在は一見独立性を保っているように見えるが、結局はその究極的な「超」存在とでもいえるようなものの支配する中で動いているに過ぎないと考えるのである。

「抽象」とは個々の事物に共通する性質から一般的概念を作り上げることである。「抽象の世界観」は万物に共通してある一つの性質が備わっていると考え、あるいは万物は一つのものから生み出されたと考える世界観である。だから本文中で「抽象」という言葉は「個々の具体的形質を備えた全てのものを超えて、原則的に全てのものを包括する概念」という意味で使うことにする。

この二つの世界観は決して二元対立をするものではなく、ある一つの世界観を解釈するときに使う二つの視点に過ぎない。この二つの世界観は融合するものであり、また場合によっては本来は「象徴の世界観」であるものが「抽象の世界観」の視点で捉えられたり(あるいはその逆になったり)することがある。このことはこの論文を最後まで読めば理解してもらえると思う。また、以下の章では様々な世界観を解釈しているが、決して年代順に追って章立てているというわけではないことを注意していただきたい。単に個別に列挙しているだけのことである。

証明の不可能な事象を無理に結び付けて、それが真実であるかのように表現することは、本来だったら避けて然るべきなのであろうが、この文章の本来の目的は、事象の科学的証明ではなく、私独自の世界観の発表にあるので、読者諸君には、このような書き方をすることを寛大に許していただきたいものである。