【第1章 原始の理 A】 アニミズム

様々な時代、様々な文化にその時代や文化に反映されるそれぞれの世界観がある。それがどのような形態をとるにせよ、その世界観には必ず相応の理論体系が存在し、何らかの形でそれは利用される。理論体系の全く無い世界観は存在しないといってよいだろう。仮にそのような怠慢な世界観があったとしたら、それはしっかりとした理論体系を備えた世界観が出現したときや、他の世界観と接触したときに他方に吸収されてしまい、残っていくことはない。

それでは、ある程度の理論体系を備えた世界観の中で最も原始的なものとは何か。長い歴史の中で様々なものを吸収し、融合しながらも現在まで残っているものとは何か。

それはアニミズムやあるいはシャーマニズムをもとにした様々な「呪術」である。

アニミズムは、生物・無生物を問わずに自然界に広く精霊や霊魂といったものの存在を認める人々の信仰のことであり、シャ−マニズムは、「神がかり、占いや予言、呪い、治療を行う祭司、あるいは呪術師であるシャ−マンを中心とした社会構成」(『魔術師の饗宴』)つまり、普通の人間が持っていないような特殊能力を持っている人間(シャーマン)を基礎とした社会構成である。

アニミズムとシャ−マニズムには、どういった理論体系(つまり「理(ことわり)」)があるのだろうか?

アニミズム

アニミズムは様々な原始文化に見られるものだ。現在では主に文明が発達途上の地域にみられる。

アニミズムは自然界に広く精霊・霊魂といったものを認めるというその性質上、文化の自然地理的な特色を色濃く反映したものであるといえる。なぜなら、人間が原始の状態で真っ先に立ち向かわなければならないものは周囲の自然環境に他ならないからであり、交通手段の発達していない時代や文化にとっての「世界」は、自分の生活している範囲内に限られてしまうからである。当然のことながら、現代においても地理的な風土は、発達した交通機関を持たない人々にとって、又はそれを利用しない人々にとってかなり重要な要素となってくるはずである。

例えば森の中で暮らす人間の文化は当然にその「森」に適応していく為に森の中での生活に適した文化となり、生活に必要な道具や食物は森の中に存在するものでまかなわれる。砂漠の中で生活する人間の文化は、砂漠に適応していく為に砂漠での生活に適した文化となり、暑い陽射しや少ない水をうまく活かすことの出来るような文化になる。周囲の環境は長い年月の間には、生物としての人間の適応性にさえも影響を与える。暑い陽射しの中で暮らしてきた種族は、ちょっとやそっとの陽射しや暑さに致命的な影響を受けることはない。同様に寒い地方の人間は、寒さに強くなるのが当然であろう。

つまり、アニミズムにおける精霊や霊魂の存在は、人間の意志では自由に操ることの出来ないもので一番身近なもの、人間が真っ先に立ち向かわなければならなかった自然の驚異あるいは包容力、そして人間自身に対するひとつの答えだといえる。

それでは、精霊や霊魂がどのようなものであるかを見てみよう。